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組織的な知識創造 SECIモデルの自分なりのまとめ - 『知識創造企業』を読んで

Dec 27, 2022

SECIモデルの理解を自分の言葉で残しておく。 最近は、自組織の知識活動はSECIモデルの4つのフェーズに照らし合わせるとどう捉えられるのか、を考えている。 その中で4つのフェーズの理解や区別が難しいところもあったので、あらためて『知識創造企業』を読み直した。 同じように本を読んだだけでは理解が難しかったという人には理解の助けになれば嬉しく思う。 本を読んでない人は、この記事で理解した気になられては困るので、本も読んでほしい。 企業内の知識創造の実例が豊富に紹介されていて、SECIモデルが有効に作用する環境条件についても触れられているので、とても勉強になる。

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SECIモデルは組織に知識が宿るプロセスを説明している。 SECIモデルに示される4つのフェーズを繰り返すことで、組織は知識を創造し蓄える。 個人的には、SECIモデルを意識して組織構造や開発プロセスをデザインすることで知識を創造する組織を作り出すこともできるんだろうと考えていて、その辺りがとても興味深い。

ここで言う知識というのは単なる情報ではなく、人の行動を決定付ける信念や価値基準を指している。 得た情報を評価し、自分なりにものごとの正当性を感じ取り、次の行動選択に繋がる学びが知識である。 知識は暗黙知として個人に蓄えられるが、組織として有効な行動や成果を得ることを期待するならば、組織として知識を蓄える必要がある。

共同化 (暗黙知→暗黙知)

個人の暗黙知を他者に共有する。 同じ仕事に取り組んで一緒に手を動かして伝えたり、自身の経験と学びを話して伝えたり、互いに意見を交換しながら議論したりすることで共有される。 個人が “内面化” によって身につけた知識が他者に共有され、組織的に知識が拡がる。 暗黙知を完全に伝えることは難しいので “共同化” を経ても「完全に理解した」とまではならないんじゃないだろうか。 (例) サービスが利用される現場の実態を紹介する取り組み。

表出化 (暗黙知→形式知)

暗黙知が概念や基本的な考え方として抽象化されて形式知が生み出される。 メタファーやコンセプトとして表現されることが多い。 暗黙知は固有事象のコンテキストによるものだが、それを汎化して「こういうものだよね」「こう考えるといいよね」というレベルの抽象度を持った形式知を作り出す。 これが暗黙知の解釈を助けて、知識として再利用可能なものとなる。 ”共同化” を経た知識は個人が各々に理解したものになるが “表出化” によって他者と共通の言葉で語れるようになることで、組織的な知識の拡がりが得られる。 (例) ある機能に関するユーザーインタビューによって製品の強みがわかったという場合に、その強みを製品コンセプトに落とし込む。

連結化 (形式知→形式知)

共通の概念を持つことで相互作用が起こり、お互いの知識やコンテキストが掛け合わされた新たな知識が形式知として生み出される。 固有の暗黙知とは異なりその正当性を支持する事例や一次情報が伴わないため「これが正解だと思われる」という仮説に近いものになるはず。 結果による評価が可能なレベルの具象度を持つ。 ”表出化” を経て一度は抽象化された知識が新たなコンテキストで具象化され、知識としての進化が起こる。 (例) 製品コンセプトをもとに議論・検討されて生まれた新機能のプロトタイプ実装。

内面化 (形式知→暗黙知)

体験を通して仮説検証を行い正当性を評価することで、容易には言語化できないレベルの深い知識=暗黙知を身に付ける。 実際に身を持って体験するだけでなく、文書から追体験することでも同様の効果は得られる。 ”連結化” により生まれた仮説は体験を通して自身の中で検証され、知識としての進化を得る これで知識創造が1サイクルする。 あくまでも完全な知識は暗黙知であり、形式知への変換を通して増幅と進化が起こり、新たな暗黙知として帰着する。 (例) 開発した新機能のフィードバックを得ることによる学び。

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